孤独死を防ぐ!松戸の高齢者見守りシステム「あんしん電話」について
- 2017/02/21
- 18:10

今日は、CoCoTが事務局として関わっている「あんしん電話」とその活動について、改めて書いてみたいと思います。
「あんしん電話」は、自動安否確認電話システムと、地域の診療所や医療機関、そして町会や地域のひとたちの活動を組み合わせた、高齢者見守り活動の仕組みです。加入者は無料で利用でき、運営は松戸市の予算、自治町会や個人からの寄付、その他助成金等で行っています。以下、「あんしん電話」の仕組みとメリットを紹介していきます。
●普段は自動電話が見守り。何かがあれば「人」が動く仕組み。
「あんしん電話」に加入すると、医療機関に設置した機器(パソコン)から、週に一回安否を尋ねる自動電話がかかってきます。その電話に対して、加入者は「※1元気です」「※2相談したい」「※3訪問して欲しい」の3つを選んでボタンを押します。どの加入者がどのボタンを押したかは、医療機関のパソコンで確認することができます。「※2」「※3」が押された場合は、診療所の方が直接電話をして状態を聞いたり、電話がかからないという場合も、町会や地域の人に連絡が行き、家を直接訪ねてもらうようになっています。

●メリット1 「向こうから(電話が)かかってくる」
よくある緊急通報装置やオプションにある相談サービスなどがありますが、それらの多くは「自分から」ボタンを押したり、「自分から」電話をする仕組みです。実は、自分から相談したり助けを求めるという行為は心理的ハードルがあるものです。しかし「あんしん電話」は「向こう(医療機関)」から電話がかかってきます。そしてボタンを押して番号を返すだけ。日々の見守りにおいて、「自分から」ではなく「向こうから」というのは大きなポイントになります。「自分からわざわざ相談するほどじゃないけど、気にはなっている」という小さな気がかりを拾うことができます。
●発想は孤独死対策 「ガス会社から電話がかかってきた」
「あんしん電話」の「向こうから」という発想は、CoCoT代表の小山が孤独死の事例を聞いたときのことがきっかけでした。松戸市常盤平の孤独死の事例の中で、孤独死が発見された理由が、ガス料金が何カ月も引き落としされずガス会社から団地の管理組合に連絡があったことがきっかけだったと聞いたとき、「なるほど」と思いずっと頭に残っていました。そしてしばらくして、どうたれ内科診療所の堂垂先生から「あんしん電話」の自動安否確認の話を聞いたとき、「この仕組みがあれば孤独死を防げる!」とひらめき、つながりのある自治町会の方たちと活動を開始しました。
お1人住まいの高齢者の多くの方は、自分が家で亡くなったあとのことを心配されています。「何カ月も誰にも見つけてもらえないのは寂しい」という方もいますが、「まわりの人たちに迷惑をかけてしまう」ことを気にされてる方も多くいます。「あんしん電話」に加入していれば、安否確認の電話に3回以上出ない場合は、地域の人が状況を確認に行く仕組みになっているので、万が一の場合も、少なくとも一週間以内には発見することができます。「あんしん電話」は、緊急時に命を守ることは苦手ですが、日々地域のみんなで見守っているという「安心」と、最後まで地域できちんと見届けますという「安心」を提供できる仕組みだと考えています。
●メリット2 「実は、機械の方が素直になれる」
「あんしん電話」は、週に一度地域の診療所から電話が「向こうから」かかってきます。そしてそれは「診療所の先生や看護師さんの声」で再生される自動電話です。この説明を聞くと「録音された音声なんて味気ない。人が直接かかわってこその見守りじゃないのか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃいます。しかし、実際に利用されている方からお話を聞くと、人が直接「体調はどうですか?」と聞いてきたら、つい「大丈夫ですよ。お陰様で。」と言ってしまうが、あんしん電話は機械だしボタンを押すだけなので、変に気をつかわず「※2相談したい」「※3訪問して欲しい」とお願いしやすい、という声が多いです。そのあとしっかり「人」が対応する仕組みになっているので、機械を通じて、人と人がつながる可能性を高めていると言えると思います。
●事例 「家から出られなくなってしまった方の話」
「あんしん電話」に加入しているある男性が、外で足を骨折してしまったときのお話です。その方は整形外科でギブス固定するが、家が4階で日常生活が困難な状態になってしまいました。しばらく困っていたところ、ちょうどそこに「あんしん電話」がかかってきてため「※3訪問してほしい」を押し、異常を知らせました。それを見た診療所の人が男性の方の家に訪問することで、状況を把握し、サポート体制を整えました。その後、リハビリ専門の診療所に通院し、結果一か月の入院となりました。

●メリット3 「1000人でも一度に安否確認ができる」
「あんしん電話」の日々の見守りは自動電話なのでほとんど「人手がかからない」ということです。機器一つで、何百人という人たちに対して一度に安否確認ができます。そして、「2」や「3」、電話がかからないなど、サインがあったときにはじめて人が動きます。見守り人員の人手不足の現状に対する大きなソリューションになると考えています。
ある町会長さんは、ご自身の地域の見守りを一人でされていて、日々各家を回ったとしても、それぞれの家にいけるのは2ヶ月に一回が限界。その間に誰か倒れてしまってるのではないか、亡くなってる方がいるかもしれない。そう思うと夜も眠れないという状況だったそうです。しかし、2016年の11月から地域にあんしん電話の仕組みを導入。週に一回は電話がかかり、何かあれば連絡が自分のところに来る。本当に気が楽になったとおっしゃってくれています。導入後の現在も、各家を訪問し、顔と顔の見える見守りも継続されているようです。
「あんしん電話」は、システムによる「恒常的な広範囲におけるインフラ」と、地域の診療所や自治町会の人たちでつくる「顔の見える見守り」、この2つがセットになって、ともに相乗効果を生む仕組みになっています。人の手だけの見守りには限界がある。見守る人たちにとっても優しい仕組みになっています。
●メリット4 「認知症の早期発見 元気な人ほど加入して欲しい」
「あんしん電話」は、安否確認電話に対して「※1」「※2」「※3」を押す仕組みですが、中には「※5」や「※9」など、違う番号が押されてるのを診療所の方が画面で確認することがあります。これは1,2度でなく、何度も続くようであれば、認知症の初期症状の可能性を考え、認知症専門の医療機関に相談するようにしています。
認知症の早期発見は難しく、ある程度症状がはっきり出るようになってから医療機関に来ることがほとんどだそうです。初期の段階で見つかり、早期に予防措置ができれば、それだけ認知症の進行を遅らせることができます。このような理由もあり、ぜひ元気なうちから「あんしん電話」に加入していただきたいと思っていますが、なかなか元気なうちから加入してくださる方はまだ少ないのが現状です。
●町会同士が連携 「松戸あんしん電話地域見守り協議会」の発足
「あんしん電話」を導入した自治町会の会長の方たちが、さらなる普及を目的として、これから導入を検討する方たちに導入のサポートを提供するために「松戸あんしん電話地域見守り協議会」を2015年にスタートさせました。協議会の活発な活躍により、現在松戸市内であんしん電話を導入している地域は56町会、加入者数は約500人となりました(2017年2月現在)。今後は、松戸市内の普及も継続しつつ、松戸市近隣エリア、また関東エリアなどにも活動の幅を広げ、地域での高齢者見守りのサポートを実現しつつ、多くの高齢者の方に「安心」を届けてまいりたいと思います。
●メリット5 「利用料は無料 機器設置もなく今ある電話がそのまま使える」
「あんしん電話」は、医療機関にあるシステムに電話番号を登録するだけなので、今もっている固定電話や携帯電話をそのまま使うことができます。つまり、サービス利用のための新しい機器をわざわざ導入する必要がなく、設置費用なども発生しません。利用者は申込書を記入し提出するだけで、一週間ほどでサービスがスタートします。また、利用料は無料で提供しています。日々の安否確認にかかる電話料金については、2015年より松戸市の予算がおりています。その他の活動は、自治町会からの寄付や、その他の助成金により運営しています。
私たちは、この社会でこの仕組みを必要としている一人でも多く方に「あんしん電話」の仕組みを届けたいと考えています。ゆくゆくは、水道、電気、ガスと並ぶくらい、どの家庭にもある「社会的インフラ」になることをビジョンとしています。そのためには出来るだけ、導入、加入のハードルを下げる必要があります。利用料が発生すれば、経済的に困窮している方は加入を見送ることが多くなるでしょう。新しい機器設置が必要となると、加入が複雑になるだけでなく、設置の人件費、機器購入経費なども発生してしまいます。
●私たちの解決策 「受給者負担ゼロモデル」への挑戦
既存の通信インフラをそのまま利用でき、利用料は無料で、お一人暮らしの高齢者と地域の人々、地域の医療介護機関をつなぐ「あんしん電話」の仕組みは、今もなお大きくなりつつある高齢化社会の課題に対する、先進的な解決策になると私たちは考えています。しかし「利用料無料」を今後も実現し続けていくには、経営基盤を安定させなければなりません。これは私たちが抱える一番と言っていい大きな課題です。しかも、サービス受給者からお金をいただかない「あんしん電話」の仕組みは、その他の方法でお金を生み出さねばならない「新しいビジネスモデル」にチャレンジしなければなりません。
私たちは、私たちが挑戦してこのビジネスモデルを「受給者負担ゼロモデル」と呼んでいます。途上国の子どもの支援活動や「国境なき医師団」などはこのモデルに近いかと思います。行政サービスや民間サービスでは手の届かない方たちにしっかりとサービスを届けるためにも、この「受給者負担ゼロモデル」を実現しなければならないと考えています。それには多くの方のご支援、ご協力が必要です。私たちも、今まで以上に活動の推進と報告を行っていきたいと思いますので、引き続きご関心をお寄せいただければ幸いです。ビジョンに共感いただける多くの方と共に、理想の実現を目指して一歩一歩進んでいきたいと思います。
◇ご支援・ご協力のお願い
①情報発信のご協力 チラシや資料を配布していただける方
地域の集まりやサークルで、チラシや資料を配布していただける方を募集しております。お店をされている方、医療機関や介護施設など、チラシを施設内に置いていただける方も募集しております。まずはチラシと資料のサンプルをお送りしますので、下記連絡先までご連絡ください。
②イベントのお手伝い、専門的スキルの提供(プロボノ)など
各地域での説明会や、お祭りやイベントでのブース出展などでお手伝いいただける方を募集しています。また、WEBページやチラシ、配布物をさらに良いものにするため、ご意見をいただけたり、専門スキルを提供していただけたら大変助かります。他にもいろいろなところでお手伝いいただける機会があると思いますので、もし「協力したい!」と思っていただける方がいましたらお気軽にご連絡ください。どんなことが出来るか一緒に見つけていきましょう。
③寄付のお願い
NPO法人CoCoTは、行政や民間のサービスでは手の届かない地域課題を解決するため、利益や効率性を優先した経済効果ではない新しい地域経済活動を創り出すべく、社会のギアチェンジに取り組んでいます。社会から孤立していく人たちがつながり直し「安心」が共有できる地域社会を築いていくため、ご寄付による当法人へのご支援をお願い申し上げます。多くの皆様からのご支援をもとに、さらに充実した活動を続けてまいりたいと存じます。お力添えくださいますよう、心からお願い申し上げます。
寄付や入会の案内はこちらから↓
http://cocot2050.blog.fc2.com/blog-entry-159.html
◇「あんしん電話」の地域導入のご相談はこちらへ
「松戸あんしん電話地域見守り協議会」では、地域への導入や個人でも加入したいという方の相談窓口として「松戸あんしん電話ほっとライン」を開設しています。業務時間は火、水、木の10時~16時。協議会事務局スタッフが状況などをお聞きし、導入に向けてのサポートをいたします。資料の送付希望から、理事会で説明して欲しいなど、スタッフの派遣も可能です。どうぞお気軽にお電話ください。
松戸あんしん電話ほっとライン 0120-386-117
(火、水、木 10時~16時)
●「あんしん電話」 新聞記事など
「町会とともに「孤独死」防げ 「高齢者安否確認システム」に連携 千葉・新松戸診療所」 http://www.min-iren.gr.jp/?p=15826
朝日新聞「お年寄り見守りシステム、松戸市が助成へ」
http://digital.asahi.com/articles/ASH3S32Z3H3SUDCB003.html?_requesturl=articles/ASH3S32Z3H3SUDCB003.html
毎日新聞「あんしん電話導入を 医療機関と連携、高齢者の健康見守り 松戸市内58町会400人登録 無料電話で気軽に相談」
mainichi.jp/articles/20160904/ddl/k12/040/027000c
東京新聞「あんしん電話」活用を 高齢者見守りが好評 松戸市の民間団体が相談窓口http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201609/CK2016090102000173.html
千葉日報「あんしん電話」普及へ 町会に加入呼び掛け 高齢者の安否確認 松戸http://www.chibanippo.co.jp/news/local/353581
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