八坂弁護士の陳述の詳細のポイントは、以下の5点です。
第1 本件育成事業の契約締結及び仕様書作成に至る経緯について
被控訴人と控訴人との間で、平成22年度「重点分野雇用創出事業地域社会雇用分野空き店舗を活用したまちづくり事業担い手育成事業」(以下、「本件育成事業」という。)の契約書及び仕様書は、長期間の協議期間を経て事業委託の契約に至っている。
第2 当事者間の契約内容に雇用期間の最低限の定めはないこと。したがって、債務不履行はないこと
本件育成事業に関しては、半年以上にもわたる長期間の協議を経て、詳細な契約書、仕様書、事業企画書が作成され、それらによって受託者たる控訴人の債務の内容は特定されているのである。
上記契約書、仕様書、事業企画書などによって特定された債務の内容以外の債務を裁判所が認定することは、
当事者間の意思の合致の内容が契約内容であるとの契約の解釈の基本を逸脱するものである。
第3 当事者間の契約内容に雇用期間の最低限の定めはないにもかかわらず、裁判所が雇用期間の最低限の定めを認定したことが不当であること。したがって、債務不履行はないこと
裁判所が、取引慣行や社会通念を検討して契約書等に明記されていない契約上の義務を認定するためには、極めて慎重に調査、検討をしなければならない。
第4 雇用創出に必要なスキルを習得しうる程度の業務従事及び研修等を行っていること。したがって、債務不履行はないこと
本件育成事業において、控訴人は、雇用期間が短い者に対しても雇用創出に必要なスキルを習得しうる程度の業務従事及び研修などの機会を十分に提供していた。
控訴人は、実施する予定の研修の内容及び実施した研修の内容について、
実施計画報告書及び実績報告書を作成し、被控訴人に提出している。
各月の実績報告書は、翌月中旬頃に控訴人から被控訴人に提出されている。
同様に、研修実施報告も提出している。
被控訴人は、実施計画報告書及び実績報告書等を公文書として保管している。
第5 松戸市に損害がないこと
1 千葉県に対する補助金の返還は松戸市が独自の判断で行ったものであり、控訴人と被控訴人との間の契約との関係はない。
2 本件訴訟が提起されてから、控訴人らに明らかにされた千葉県緊急雇用創出事業補助金交付要綱によれば、補助金交付事業において雇用期間の最低限の定めを置くことは義務づけられていない。
そもそも、被控訴人は、千葉県からの補助金の返還要求に応じる必要がなかったものである。また、被控訴人が独自の判断で千葉県に補助金を返還することは自由であるが、そのことは控訴人による事業に原因があるものではなく、被控訴人の自由な判断によるものと言うべきである。
したがって、松戸市には損害がない。3 被控訴人が千葉県に対して補助金の返還に応じなければならないと判断した理由は、本訴訟においては、いまだに明らかにされていないと判断するよりほかない。
控訴人は、被控訴人が補助金を返還するに至った経緯について、被控訴人が保有する文書の提出を求める。
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