【松戸アートライン民事訴訟 八坂弁護士による一審判決の総括と控訴審の争点<経緯>
- 2015/02/01
- 16:46
昨年(2014年)11月11日の控訴審第2回口頭弁論において、
裁判長は、2015年1月中旬を判決言い渡しの時期としました。
既に2月に入りましたが、判決言い渡しの日程は提示されていません。
判決言い渡しの時期がずれ込んでいることの理由はわかりませんが、
少なくとも、今までと違う流れになっていることは推察できます。
判決言い渡しの時期が遅れていることを踏まえて、
昨年の9月26日、「アートライン訴訟勉強会」において、
八坂玄功弁護士が一審判決の総括と控訴審の争点などを説明した時の記録を掲載します。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::以下、文責:ToTo:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
八坂弁護士はまず控訴理由書の『はじめに』の部分で、
「本件は、訴訟人(CoCoT)が詐術や虚偽の請求などを行って補助金を不正に受給したというような問題ではない。
千葉県からの補助金の交付要件を充足しないとの指摘を受けた被訴訟人(松戸市)が千葉県に補助金を返還し、
その金額について債務不履行などを理由として控訴人(CoCoT)に請求しているという事件です」と
強調した上でこの事件の本質を次のように指摘しました。
「行政による民間事業者に対する業務委託においては、
行政側が詳細な仕様書を定め、受託者はその仕様に沿って忠実に業務を行うという関係にある。
本件においても、ココットは松戸市との長期間にわたる協議のもとに作成した契約書や仕様書に基づいて業務を執行し、定期的に松戸市に報告していた。
それにも係わらず、
委託者として契約書、仕様書に基づき随時の監督を行うことが可能であり、実際に監督していた松戸市が、
債務不履行などの責任を問うことが許されるのかが問われる事件です。
これを分かりやすく、建設請負工事の発注者、受注者、下請け業者の三者間の関係に例えて考えてみましょう。
発注者(A=県)、受注者(B=松戸市)下請け業者(C=ココット)の三者間において、
契約内容、仕様書などに一定の要件が定められたAB間の契約に基づき、
BがCと長期間にわたり契約書や仕様書を作成したにもかかわらず、
BはAB間の契約において定められた諸要件を盛り込むことを怠り、
かつ、BC間の契約の履行状況についてCがBに対して常時報告し、Bが常時監督していたにも係わらず、
仕事の完成の後になって、BがAからAB間の契約内容や仕様書の定めを満たしていないことを指摘されたために、
初めてBがCに対して債務不履行責任を追及しているようなものです。
このようなBの請求が認められるはずがない。
第一審裁判所は、極めて初歩的な誤りを犯しているといわざるをえません。」
さらに八坂弁護士は、争点の7点について一審判決の誤りや矛盾を以下の通り、順次説明しました。
① 【契約締結等の経緯について】
(Ⅰ)長期間にわたる交渉経緯を経て、詳細な契約書、仕様書等が作成されていること。
(Ⅱ)契約書の作成の遅れ、事業執行の遅れ等について、松戸市側に重大な責任があること。
(Ⅲ)それによってCoCoT側の事業の執行について重大な支障が生じたこと。
(Ⅰ)に関しては、「平成22年(2010年)1月からの経緯を控訴理由書に8ページに亘って記しました。
契約書や仕様書が長期間(平成22年1月から同年8月17日頃までの半年以上)にわたって定められ、
詳細な契約書、仕様書等が作成されていた事実があり、
それ以外の件についてCoCoTに責任がないことを明らかにするためです。
そもそも県の補助金活用は松戸市側から提案されていた。
22年1月に小山副代表理事(以下、小山氏)は雑談的に市商工観光課長から緊急雇用予算が組まれるだろうと言われ、2月には政策調整課の課長がCoCoTの事務所を訪れ、緊急雇用基金に関する役所の部内資料を置いていった。
2月25日頃までに資料を取り、事業期間が22年7月から23年3月までの9か月以内と固まった。
これを受けて6月14日、CoCoTはハローワークにアーティスト募集の求人票(22年9月1日~22年12月31日=臨時:4カ月未満)を出した。
6月18日のアートラインプロジェクト打ち合わせでは、
市政策調整課の職員が持参した資料に「空き店舗を活用したまちづくり担い手事業」と「松戸アートラインプロジェクト事業」のイベント、公募業務の間に「一部事業の連携」という記載がある。
これは松戸市が両事業に連携関係があることを容認し、推奨していたことが明らかとなる資料です。」
(Ⅱ)に関しては、「市長選(22年6月、川井市長が落選し、現本郷谷市長が当選=現在2期目)の余波なのか、
本件育成事業の予算が執行される予定の7月1日になっても市から事業についての音沙汰がなかったため、
CoCoTから連絡を入れたところ、
商工観光課職員らからは『市長が交代し、前市長の事業であるアートライン事業や緊急雇用事業が実施できるかわからない。契約は先に延ばす』という回答があった。
このため、小山氏は7月26日に本郷谷市長と面会したところ、『アートでの地域活性化やNPOとの連携は強化していきたい』との回答を得た。
ただし、雇用創出事業契約書は8月17日に市の商工観光課職員から不用意な形で電子メールで契約書データが送られてきたため、やむを得ずCoCoTで打ち出して契約書をつくった。
一審では契約書の作成日が平成22年7月1日と記載されているが、実際の作成日は同年8月17日以後だった。
すべて松戸市側の事情によるもので、市に重大な責任がある。」
(Ⅲ)に関しては、「これらの事情によりCoCoTはやむなく事業スケジュールの大幅な見直しを迫られた。
さらに事業費についても結局、22年12月末日までに支払われたのは、
7月分から9月分までの3か月分に過ぎなかった。
事業が契約上、7月から開始されているのにもかかわらずその振り込みは9月25日にずれ込み、
当初予定していた予算の3分の1しか支払われなかった。これも事業の執行に支障をもたらしたが、
1審判決では理解されていない。」
裁判長は、2015年1月中旬を判決言い渡しの時期としました。
既に2月に入りましたが、判決言い渡しの日程は提示されていません。
判決言い渡しの時期がずれ込んでいることの理由はわかりませんが、
少なくとも、今までと違う流れになっていることは推察できます。
判決言い渡しの時期が遅れていることを踏まえて、
昨年の9月26日、「アートライン訴訟勉強会」において、
八坂玄功弁護士が一審判決の総括と控訴審の争点などを説明した時の記録を掲載します。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::以下、文責:ToTo:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
八坂弁護士はまず控訴理由書の『はじめに』の部分で、
「本件は、訴訟人(CoCoT)が詐術や虚偽の請求などを行って補助金を不正に受給したというような問題ではない。
千葉県からの補助金の交付要件を充足しないとの指摘を受けた被訴訟人(松戸市)が千葉県に補助金を返還し、
その金額について債務不履行などを理由として控訴人(CoCoT)に請求しているという事件です」と
強調した上でこの事件の本質を次のように指摘しました。
「行政による民間事業者に対する業務委託においては、
行政側が詳細な仕様書を定め、受託者はその仕様に沿って忠実に業務を行うという関係にある。
本件においても、ココットは松戸市との長期間にわたる協議のもとに作成した契約書や仕様書に基づいて業務を執行し、定期的に松戸市に報告していた。
それにも係わらず、
委託者として契約書、仕様書に基づき随時の監督を行うことが可能であり、実際に監督していた松戸市が、
債務不履行などの責任を問うことが許されるのかが問われる事件です。
これを分かりやすく、建設請負工事の発注者、受注者、下請け業者の三者間の関係に例えて考えてみましょう。
発注者(A=県)、受注者(B=松戸市)下請け業者(C=ココット)の三者間において、
契約内容、仕様書などに一定の要件が定められたAB間の契約に基づき、
BがCと長期間にわたり契約書や仕様書を作成したにもかかわらず、
BはAB間の契約において定められた諸要件を盛り込むことを怠り、
かつ、BC間の契約の履行状況についてCがBに対して常時報告し、Bが常時監督していたにも係わらず、
仕事の完成の後になって、BがAからAB間の契約内容や仕様書の定めを満たしていないことを指摘されたために、
初めてBがCに対して債務不履行責任を追及しているようなものです。
このようなBの請求が認められるはずがない。
第一審裁判所は、極めて初歩的な誤りを犯しているといわざるをえません。」
さらに八坂弁護士は、争点の7点について一審判決の誤りや矛盾を以下の通り、順次説明しました。
① 【契約締結等の経緯について】
(Ⅰ)長期間にわたる交渉経緯を経て、詳細な契約書、仕様書等が作成されていること。
(Ⅱ)契約書の作成の遅れ、事業執行の遅れ等について、松戸市側に重大な責任があること。
(Ⅲ)それによってCoCoT側の事業の執行について重大な支障が生じたこと。
(Ⅰ)に関しては、「平成22年(2010年)1月からの経緯を控訴理由書に8ページに亘って記しました。
契約書や仕様書が長期間(平成22年1月から同年8月17日頃までの半年以上)にわたって定められ、
詳細な契約書、仕様書等が作成されていた事実があり、
それ以外の件についてCoCoTに責任がないことを明らかにするためです。
そもそも県の補助金活用は松戸市側から提案されていた。
22年1月に小山副代表理事(以下、小山氏)は雑談的に市商工観光課長から緊急雇用予算が組まれるだろうと言われ、2月には政策調整課の課長がCoCoTの事務所を訪れ、緊急雇用基金に関する役所の部内資料を置いていった。
2月25日頃までに資料を取り、事業期間が22年7月から23年3月までの9か月以内と固まった。
これを受けて6月14日、CoCoTはハローワークにアーティスト募集の求人票(22年9月1日~22年12月31日=臨時:4カ月未満)を出した。
6月18日のアートラインプロジェクト打ち合わせでは、
市政策調整課の職員が持参した資料に「空き店舗を活用したまちづくり担い手事業」と「松戸アートラインプロジェクト事業」のイベント、公募業務の間に「一部事業の連携」という記載がある。
これは松戸市が両事業に連携関係があることを容認し、推奨していたことが明らかとなる資料です。」
(Ⅱ)に関しては、「市長選(22年6月、川井市長が落選し、現本郷谷市長が当選=現在2期目)の余波なのか、
本件育成事業の予算が執行される予定の7月1日になっても市から事業についての音沙汰がなかったため、
CoCoTから連絡を入れたところ、
商工観光課職員らからは『市長が交代し、前市長の事業であるアートライン事業や緊急雇用事業が実施できるかわからない。契約は先に延ばす』という回答があった。
このため、小山氏は7月26日に本郷谷市長と面会したところ、『アートでの地域活性化やNPOとの連携は強化していきたい』との回答を得た。
ただし、雇用創出事業契約書は8月17日に市の商工観光課職員から不用意な形で電子メールで契約書データが送られてきたため、やむを得ずCoCoTで打ち出して契約書をつくった。
一審では契約書の作成日が平成22年7月1日と記載されているが、実際の作成日は同年8月17日以後だった。
すべて松戸市側の事情によるもので、市に重大な責任がある。」
(Ⅲ)に関しては、「これらの事情によりCoCoTはやむなく事業スケジュールの大幅な見直しを迫られた。
さらに事業費についても結局、22年12月末日までに支払われたのは、
7月分から9月分までの3か月分に過ぎなかった。
事業が契約上、7月から開始されているのにもかかわらずその振り込みは9月25日にずれ込み、
当初予定していた予算の3分の1しか支払われなかった。これも事業の執行に支障をもたらしたが、
1審判決では理解されていない。」
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