松戸アートライン民事訴訟 争点整理対する質問(八坂弁護士による争点整理)
- 2015/02/01
- 18:39
*前号の続き3
昨年(2014年)11月11日の控訴審第2回口頭弁論において、裁判長は、2015年1月中旬を判決言い渡しの時期としました。既に2月に入りましたが、判決言い渡しの日程は提示されていません。判決言い渡しの時期がずれ込んでいることの理由はわかりませんが、少なくとも、今までと違う流れになっていることは推察できます。
判決言い渡しの時期が遅れていることを踏まえて、昨年の9月26日、「アートライン訴訟勉強会」において、八坂玄功弁護士が一審判決の総括と控訴審の争点などを説明した時の記録を掲載します。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::以下、文責:TOTO::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
八坂弁護士による争点の説明後、出席者から関連質問が出されました。
以下、質疑応答の内容の抜粋。
―控訴文に関する説明を聞いて1審判決であいまいだった事実関係が分かった。
市民活動にたずさわっていると、協働事業という理念にとらわれがちだったが、
前文の例で協働事業も契約関係の認識が重要だと感じた。これは経験に基づくものですか?
(以下、八坂氏)「控訴審を急きょ依頼されましたが、経緯と内容を知らないから逆に見えてくるものがありました。
協働事業という理念はともかく、民間事業と同様に『委託者』を『下請け業者』として置き換えてシンプルに考えたらどうなるかと・・?
自治体の管理力が強い協働事業の中でも、契約書、仕様書に基づく問題がある。
重複しますが、もっと細かく言うと、例えば県を発注者A社(デベロッパー)、松戸市を受注者B社(ゼネコン)、CoCoTを下請け業者C社(関連工事会社)として考えるとどうなるか。
C社はB社の管理・監督下で仕様書通りに工事を進めた。その都度点検を受け、この工事でよしと了解も得ていた。請け負い契約は果たしていたわけです。
しかし竣工後になってから、B社はA社からAB社間の契約通りの工事ではないと言われてしまった。
そこでB社は受注金の全額をA社に返した(そんなことは通常あり得ないことですが、実際行われた時点でB社はA社間との契約上の違反を全面的に認めたことになる)。
それなのにB社は仕様書通りにやっていた下請けのC社に対し、お前の責任だからA社に返した受注金全額を返せという。
これは契約上、許されない行為ではないか。それが1審で斟酌されていない。
また、過失相殺についても、学生を職員のミスで雇用した点のみで市の過失を3割として限定し、この事業が発生した当初からの諸事情と契約上の問題、つまり契約書・仕様書の作成法(事業報告書=研修報告・期間も含めて)やその内容的な問題も斟酌されていない。これらが争点になると考えています。」
―控訴審へはどのような対応を考えておられますか?
(八坂氏)「委託義務書類や業務報告書など証拠も大量に出している。
市に対しては研修報告書についても情報開示請求をしたが、開示されていない。
1審では研修を裏付けるものはないとされたが、実際にはある。証拠もある。」
―和解案の提案の可能性もあるのか。
(八坂氏)「これは一般の民事訴訟ですが、松戸市からの和解の提案はないと思います。
松戸市は、その意思はないと表明していますので。
私は過去に中野区を相手取り、非常勤保育士の雇い止めをめぐる訴訟は高裁まで、住民訴訟は最高裁まで係争したが、控訴審で3人の裁判官の判断を覆さねばならない。
大きな仕事なので、市民の傍聴やご意見などが大切です。
裁判の支援体制を整えていただければと思います」
―実は私自身もパートナーシップ検討委員会の1員でしたが、
市職員の中には、市民活動に対する反発や無理解があると感じていた。
パートナーシップ条例策定委員会が提唱したパートナーシップの理想が松戸で機能するのか肌寒い思いがする。
―事業中も、その後も県の補助金交付要綱などは知らされていなかったのか。雇用期間などに関する資料もどうなのですか。
(小山氏)「市から出された仕様書だけで、交付金要綱や雇用期間の資料など提示されることはなかった。
その時点での具体的な実施要項に類するものは、提示されないと情報として手に入れることはできません。
雇用期間3か月の問題は、2012年8月の補助金返還決定の際、報道各社に対する市のプレスリリース資料に書かれていたことで初めて知りました」
(川瀬氏)「市は開催期間中の2010年12月と翌年1月の2回執行検査を行いました。
雇用者らへの支払い、雇用保険などを調べて、学生の履歴書も持ち帰り、何の問題もないと言っていた。
2009年の事業(まつどインフォメーションデスク運営管理事業)から学生を採用していたが、ハローワークが紹介して来たので市の担当者に確認したら問題ないということでそうしていました。
すべてOKということで事業を終了したのに2年後になって問題とされたわけです。」
―1審判決で7割とされたCoCoTの過失には「仮執行できる」という付則文がついていましたが、まつど市民活動サポートセンターの管理代行料を相殺されることは予想していたのですか?
(川瀬氏)「その心配があったので、7月早々、担当課の市民自治課と資金が断たれては、運営上市民活動に混乱が生じるのでその事態は避けようと話し合いを申し入れました。
松戸市は、市民自治課の課長は、継続して話し合うと回答しましたが、結局、一切話し合うことなく、管理代行料は支払われなかった。
7月31日夜に市職員が相殺書(代行料170万円を相殺するので支払わない=6月分給与、7月分施設運営費分)を持ってきた。それには元金として7割ではなく10割の金額が記されていました。『この先も支払いがなければ職員を配置できない』と言ったら、『職務放棄するなら指定管理者を取り消す』と言って帰った。
そして翌8月1日にCoCoTの指定管理者取り消しと直営を強行し、発表したのです。
公募市民らによるパートナーシップ委員会で5年もかけて議論して実現した公設民営の施設が一夜にして直営に逆戻りしてしまいました。
執行停止は手続き上可能だが、それには与託金が2000万円必要なんですね。
口座が凍結されてしまった状態で、もともと内部留保が認められていないNPOにとっては到底、無理な金額です」
―8月は次期指定管理者の募集月でしたね。サポセンの張り紙には市の直営期間を平成27年3月31日までと表記されていますが、ということは4月1日付で別の団体に指定管理者が選出されるということですか?
(小山氏)「9月に公募が締め切られてプレゼンテーションを行った後、11月上旬に順位が決められ、12月議会に諮られて3月に予算化される予定だと思います。
この問題をNPO全体が直面している社会問題と捉えることもできず意思表明のできない状況に置かれた指定管理者がNPOの支援をするというとき、
結局行政に「イエス」と言う団体の支援になってしまうことを危惧しています。」
―公的サービスよりも自由な発想の民間活力が評価され、その方式を導入するべきだという全国的な流れの先駆けとして得た民営化なのに、時代に逆行しているとしかいいようがない。いいNPO、悪いNPOに仕分けされてしまう。これに歯止めをかけないと・・。
(小山氏)「そのためにも、この事件の情報共有を進め、事実を検証し、市民にも正しい情報を提供していくためのプラットホームづくりが必要です。NPOや市民活動団体が行政と契約するときの制度や法的な保護が必要だと感じています。この勉強会をこれからそのように位置付けていきたいと考えています。」
(文責:TOTO)
昨年(2014年)11月11日の控訴審第2回口頭弁論において、裁判長は、2015年1月中旬を判決言い渡しの時期としました。既に2月に入りましたが、判決言い渡しの日程は提示されていません。判決言い渡しの時期がずれ込んでいることの理由はわかりませんが、少なくとも、今までと違う流れになっていることは推察できます。
判決言い渡しの時期が遅れていることを踏まえて、昨年の9月26日、「アートライン訴訟勉強会」において、八坂玄功弁護士が一審判決の総括と控訴審の争点などを説明した時の記録を掲載します。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::以下、文責:TOTO::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
八坂弁護士による争点の説明後、出席者から関連質問が出されました。
以下、質疑応答の内容の抜粋。
―控訴文に関する説明を聞いて1審判決であいまいだった事実関係が分かった。
市民活動にたずさわっていると、協働事業という理念にとらわれがちだったが、
前文の例で協働事業も契約関係の認識が重要だと感じた。これは経験に基づくものですか?
(以下、八坂氏)「控訴審を急きょ依頼されましたが、経緯と内容を知らないから逆に見えてくるものがありました。
協働事業という理念はともかく、民間事業と同様に『委託者』を『下請け業者』として置き換えてシンプルに考えたらどうなるかと・・?
自治体の管理力が強い協働事業の中でも、契約書、仕様書に基づく問題がある。
重複しますが、もっと細かく言うと、例えば県を発注者A社(デベロッパー)、松戸市を受注者B社(ゼネコン)、CoCoTを下請け業者C社(関連工事会社)として考えるとどうなるか。
C社はB社の管理・監督下で仕様書通りに工事を進めた。その都度点検を受け、この工事でよしと了解も得ていた。請け負い契約は果たしていたわけです。
しかし竣工後になってから、B社はA社からAB社間の契約通りの工事ではないと言われてしまった。
そこでB社は受注金の全額をA社に返した(そんなことは通常あり得ないことですが、実際行われた時点でB社はA社間との契約上の違反を全面的に認めたことになる)。
それなのにB社は仕様書通りにやっていた下請けのC社に対し、お前の責任だからA社に返した受注金全額を返せという。
これは契約上、許されない行為ではないか。それが1審で斟酌されていない。
また、過失相殺についても、学生を職員のミスで雇用した点のみで市の過失を3割として限定し、この事業が発生した当初からの諸事情と契約上の問題、つまり契約書・仕様書の作成法(事業報告書=研修報告・期間も含めて)やその内容的な問題も斟酌されていない。これらが争点になると考えています。」
―控訴審へはどのような対応を考えておられますか?
(八坂氏)「委託義務書類や業務報告書など証拠も大量に出している。
市に対しては研修報告書についても情報開示請求をしたが、開示されていない。
1審では研修を裏付けるものはないとされたが、実際にはある。証拠もある。」
―和解案の提案の可能性もあるのか。
(八坂氏)「これは一般の民事訴訟ですが、松戸市からの和解の提案はないと思います。
松戸市は、その意思はないと表明していますので。
私は過去に中野区を相手取り、非常勤保育士の雇い止めをめぐる訴訟は高裁まで、住民訴訟は最高裁まで係争したが、控訴審で3人の裁判官の判断を覆さねばならない。
大きな仕事なので、市民の傍聴やご意見などが大切です。
裁判の支援体制を整えていただければと思います」
―実は私自身もパートナーシップ検討委員会の1員でしたが、
市職員の中には、市民活動に対する反発や無理解があると感じていた。
パートナーシップ条例策定委員会が提唱したパートナーシップの理想が松戸で機能するのか肌寒い思いがする。
―事業中も、その後も県の補助金交付要綱などは知らされていなかったのか。雇用期間などに関する資料もどうなのですか。
(小山氏)「市から出された仕様書だけで、交付金要綱や雇用期間の資料など提示されることはなかった。
その時点での具体的な実施要項に類するものは、提示されないと情報として手に入れることはできません。
雇用期間3か月の問題は、2012年8月の補助金返還決定の際、報道各社に対する市のプレスリリース資料に書かれていたことで初めて知りました」
(川瀬氏)「市は開催期間中の2010年12月と翌年1月の2回執行検査を行いました。
雇用者らへの支払い、雇用保険などを調べて、学生の履歴書も持ち帰り、何の問題もないと言っていた。
2009年の事業(まつどインフォメーションデスク運営管理事業)から学生を採用していたが、ハローワークが紹介して来たので市の担当者に確認したら問題ないということでそうしていました。
すべてOKということで事業を終了したのに2年後になって問題とされたわけです。」
―1審判決で7割とされたCoCoTの過失には「仮執行できる」という付則文がついていましたが、まつど市民活動サポートセンターの管理代行料を相殺されることは予想していたのですか?
(川瀬氏)「その心配があったので、7月早々、担当課の市民自治課と資金が断たれては、運営上市民活動に混乱が生じるのでその事態は避けようと話し合いを申し入れました。
松戸市は、市民自治課の課長は、継続して話し合うと回答しましたが、結局、一切話し合うことなく、管理代行料は支払われなかった。
7月31日夜に市職員が相殺書(代行料170万円を相殺するので支払わない=6月分給与、7月分施設運営費分)を持ってきた。それには元金として7割ではなく10割の金額が記されていました。『この先も支払いがなければ職員を配置できない』と言ったら、『職務放棄するなら指定管理者を取り消す』と言って帰った。
そして翌8月1日にCoCoTの指定管理者取り消しと直営を強行し、発表したのです。
公募市民らによるパートナーシップ委員会で5年もかけて議論して実現した公設民営の施設が一夜にして直営に逆戻りしてしまいました。
執行停止は手続き上可能だが、それには与託金が2000万円必要なんですね。
口座が凍結されてしまった状態で、もともと内部留保が認められていないNPOにとっては到底、無理な金額です」
―8月は次期指定管理者の募集月でしたね。サポセンの張り紙には市の直営期間を平成27年3月31日までと表記されていますが、ということは4月1日付で別の団体に指定管理者が選出されるということですか?
(小山氏)「9月に公募が締め切られてプレゼンテーションを行った後、11月上旬に順位が決められ、12月議会に諮られて3月に予算化される予定だと思います。
この問題をNPO全体が直面している社会問題と捉えることもできず意思表明のできない状況に置かれた指定管理者がNPOの支援をするというとき、
結局行政に「イエス」と言う団体の支援になってしまうことを危惧しています。」
―公的サービスよりも自由な発想の民間活力が評価され、その方式を導入するべきだという全国的な流れの先駆けとして得た民営化なのに、時代に逆行しているとしかいいようがない。いいNPO、悪いNPOに仕分けされてしまう。これに歯止めをかけないと・・。
(小山氏)「そのためにも、この事件の情報共有を進め、事実を検証し、市民にも正しい情報を提供していくためのプラットホームづくりが必要です。NPOや市民活動団体が行政と契約するときの制度や法的な保護が必要だと感じています。この勉強会をこれからそのように位置付けていきたいと考えています。」
(文責:TOTO)
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